びせいぶつけんさトリビア
びせいぶつけんさトリビア No.6
みなさんこんにちは。まずは下にお示しした喀痰のグラム染色所見をご覧ください。形態から何を推定しますでしょうか?

喀痰① グラム染色 B&M法×1000

喀痰② グラム染色 B&M法×1000 グラム陰性短桿菌を多数認める
例えばこんな喀痰のグラム染色像であるなら通常はHaemophilus influenzaeを推定して検査をすすめ、培養で発育してくることを期待するのではないかと思います。
しかし、翌日ヘモフィルスのコロニーを認めなかった場合、みなさんはどうしますか?
Bordetella pertussis を疑いますよね。
(上記の写真の喀痰からはいずれもB. pertussis が分離されました。)
で、慌ててボルデー・ジャング培地を追加したりすると

ボルデー・ジャング培地 37℃, 4day
このような水銀様光沢の弱いβ溶血性のコロニーが4日ほどで形成されますよね。
あっ・・ボルデー・ジャング培地なんて常備してませんっていう心の声が聞こえてきました。
では・・百日咳菌のLAMP法が保険適応になっているのでそちらの検査を促す・・でもいいかもしれませんが、やはりバイ菌屋は培養して検出したい!ですよね。
ということで、あまり知られていない裏技的なものをご紹介したいと思います。
下の写真はミュラーヒントン5%ヒツジ血液寒天培地です。そうです。B. pertussis はTSAやHIベースのヒツジ血液寒天培地には発育しませんが、ミュラーヒントン5%ヒツジ血液寒天培地には発育します。

ミュラーヒントン5%羊ヒツジ血液寒天培地 37℃, 4day

ミュラーヒントン5%ヒツジ血液寒天培地でのB. pertussis のコロニー 培養4日目
みなさん、知っていました?私はこれを知った「駆け出し」の頃、結構衝撃的だったんですけど。。。『新 細菌培地学講座』にはボルデー・ジャング寒天はウマ、ヒト、ヒツジ、ウサギのいずれでも良いって書いてありました。血液の種類はあまり関係ないんですね。ボルデー・ジャング寒天の組成で特徴的なものといえば “ ジャガイモ浸出液 ” ですが、ミュラーヒントン寒天にも似たようなものが入っていますね。“ デンプン ” です。これがいい感じにB. pertussis を発育させてくれるのかもしれませんね。ボルデー・ジャング培地は常備していなくてもミュラーヒントン5%ヒツジ血液寒天培地は常備している施設はあるのではないでしょうか?ミュラーヒントン血寒をB. pertussisの分離に使っちゃおう!ってことです。もちろん発育支持力は本家本元のボルデー・ジャング寒天に敵わないですが、何もできないよりはいいんじゃないかと。ちなみに写真のCEX(セファレキシン)のディスクは主に口腔内連鎖球菌の抑制に役立ちます。
2018年1月から百日咳は五類感染症として定点疾患から全数届け出対象疾患になりました。
どの医療機関でも百日咳を診断された場合には届出が必要です。
ミュラーヒントン血寒で B. pertussisの分離に成功したよ!という方いたらぜひ教えてください(笑)

