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微生物検査研究班

びせいぶつけんさトリビア

びせいぶつけんさトリビア No.2

2012-10-30

写真は便のグラム染色(×1000)です。何か気になるものはありませんか?

WBCではない何か変な細胞が出てますね。これは何でしょうか?

便を生鮮塗抹(×400)で覗いてみました。

たしかに何かいます。何かのシストのようにも見えますが厚い細胞壁構造は認めません。

よくわからないので拡大したものです。大きさはだいたい6-12μmでばらつきがみられました。中央部には大きな液胞のようなもので占められ、核様の顆粒を含む細胞質は周辺に押しやられリング状を示しています。

   目が慣れるといっぱい見えてきました。やはり中央部は抜けて見え、その周辺に核のようなもの見えます。

コーン染色(×1000)を実施してみると、そのリング状の形態は、より鮮明に観察されました。

形態からこの原虫はBlastocystis hominis と思われました。

Blastocystis hominis は糞便から検出され、長い間、非病原性の酵母の1種と考えられてきましたが、現在は消化管寄生原虫とされています。大量の感染により下痢を引き起こすことは世界中で報告がありますが本邦での関心は薄く、臨床報告も少ないようです。

 疫学的には世界中に広く分布しているといわれ、便からの検出率はThe johns Hopkins POC-IT ABX Guideによると日本では0.5%、インドネシアでは60%にもなるようです。他の消化管寄生原虫と同様に糞口感染であるため、検出率は地域の衛生状態に依存しそうです。また、男性同性愛者、知的障害者施設などでは検出率が上がるようです。

 さて、病原性ですが下痢、腹痛、体重減少といった症状を引き起こすことが報告されておりますが、一方で、健常人の便中にも認められ、病原性は明確とはなっていないようです。いくつかの報告によると検便検査(×400)で1視野5個以上検出される場合に臨床的意義があるとされています。また、B. hominisは各種の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類からも検出され、タイプの異なるいくつかの株が存在することがわかっており、ヒトに対する病原性に差があっても不思議ではないようです。

 糞便中のB. hominisは直径6-40μmの大きさで円形から楕円形を示し、中央部は巨大な液胞によって占められ、その内部にはルゴール好染性の顆粒状物質が観察されることがあります。液胞によって周囲に押しやられた細胞質には暗緑色~褐色の顆粒1-10個程観察されるのが特徴的で、これらは核あるいはミトコンドリアと考えられています。赤痢アメーバのシストと同程度の大きさのものも多くみられますがB. hominis は細胞辺縁部の顆粒(核?)が特徴的です。ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバのシスト壁は厚く観察されますがB. hominisの液胞型は明瞭な壁構造はみられず、厚い壁構造を想定していると見落としてしまう可能性があるので注意が必要です。検出にはTrichrome染色が最も適しているとされていますが日本ではあまり馴染みがないのではないでしょうか。

虫体が検出されていても無症候性の場合も多く、B. hominis の検出=治療というわけにもなかなかいきません。他を否定する必要がありそうです。治療にはメトロニダゾールやSTが用いられますが効果は不定です。実際にメトロニダゾールで虫体が消失しなかった例もありました。

何か気になったら便を生で覗いてみましょう。何か見つかりますよ。きっと。

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