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微生物検査研究班

日々の検査から

日々の検査から No.10

2013-04-06

提出された血液培養 2セット4本すべてのボトルの陽性アラートが鳴り響きました。

ボトル内容液を染色してみたのがこの写真

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

血液培養ボトル内容液のグラム染色像

連鎖状のグラム陽性球菌を認めています。感染性心内膜炎が頭をよぎる瞬間でもあります。
主治医に報告し、速やかに培養を実施。翌日 培地を観察すると血液寒天培地に発育が認められません。嫌気培養も実施しているので、パウチ袋の外から観察するとどうやら菌が発育しているようです。
ここで嫌気性菌と決めつけると痛い目にあいます。同時にサブカルチャーを実施したチョコレート寒天培地を観察すると、立派にコロニーを形成しています。

IMG_2649

チョコレート寒天培地上のコロニー

念のためコロニーをグラム染色してみると、次の写真のように。

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チョコレート寒天上のコロニーをグラム染色した写真

最初の連鎖球菌はどこへ消えた? コンタミ?

いえいえ 安心してください。これが有名なNVS(nutritionally variant streptococci)です。
NVSは以下の2属4菌種が知られています。
Abiotrophia defectiva
Granulicatella adiacens
Granulicatella elegans
Granulicatella balaenopterae

感染性心内膜炎から検出されるviridans group streptococciの1割前後をNVSが占めると言われています。
この菌の特徴は
・ヒツジ血液寒天培地に発育しない(M58は除く)
・チョコレート寒天培地には発育(ただし、発育しない場合もある。また、ブルセラHKやABHKなどの嫌気性菌用培地で嫌気培養は可能)
・寒天培地上のコロニーを染色すると多形性を示しレンサ球菌とは思えない形態をとる
以上のような特徴を持っています。

NVSの発育にはL-システインやビタミンB6を要求するために一般的なヒツジ血液寒天培地には発育することができませんが、ブドウ球菌はL-システインやビタミンB6、NADなども菌体外に放出するためヒツジ血液寒天培地上のブドウ球菌の周りには衛星現象としてNVSの発育を認めることができます。
ちなみに、以下は発育を認めなかったヒツジ血液寒天培地の上に黄色ブドウ球菌を画線して一晩培養したもの。

IMG_2656

黄色ブドウ球菌の周囲にNVSの小型のコロニーの発育を認める

見事に衛星現象ですね。
Api 20Strepで同定すると Granulicatella adiacens となりました。口腔内などの常在菌ですので、ますます感染性心内膜炎を疑います。
臨床側も病歴や心雑音の存在などから感染性心内膜炎を疑い、心エコーを実施したところ疣贅を認めました。フォローアップの血液培養でも陽性となりDukeの診断基準の大基準2項目を満たし、感染性心内膜炎確定です。これから菌が消失してから4週から6週ほどの治療となります。ペニシリンGとゲンタマイシン(シナジーを期待して投与)での治療が推奨されていますが、NVSによる感染性心内膜炎は再発や失敗が多いと言われています。私達、微生物検査室で働くものが治療に貢献するには、菌を早く正しく同定することが何よりも求められます。同定が嫌気性菌になったり、発育しなかったなどの結果で終わらないように注意しましょう。

この菌についての注意点、病原性などは以下の書籍にわかりやすく紹介されていますので、参考にしてみてください。

Medical Technology別冊  「いま知りたい 臨床微生物検査実践ガイド 珍しい細菌の同定・遺伝子検査・質量分析 」 大楠清文 著

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