日々の検査から
日々の検査から No.9
外科から乳腺炎の培養依頼
膿汁が提出されました。
グラム染色では好中球を多数認めるも菌は認めない。培養48時間後も寒天培地上には菌は見えず、液体培地も濁ってない。
培養終了。No Growthということで・・・いやいやちょっと待って下さい。
培養検査は、患者・臓器・原因微生物を考えて検査を進める必要があります。乳腺炎の膿汁と原因微生物を考えてみてください。軟部組織感染の代表選手であるブドウ球菌や連鎖球菌は思い浮かべるはず、そしてそれらの菌は培養で検出するのは比較的問題ないはずです。
乳腺炎で菌が発育しない。その場合には、あの菌を想定します。
というわけで、2日目で終了せずにさらに培養延長
3ないし4日目になると、培地には極々小さなコロニーが!(注 写真は発育した菌を蒔き直したものなので菌量が多いです)
トリソイブロスもぱっと見濁ってませんが、よくよく観察すると濁ってます。
さっそくグラム染色を実施すると
形態不正のグラム陽性桿菌を認めました。
改めて最初の塗抹を念入りに見直してみるといました。菌量が少なく、最初の塗抹で見落としていたようです。

検体中の菌体
Api Coryneで同定を実施すると、
同定コード 2040104 Corynebacterium argentoratense となりました。
しかし、発育したコロニーの小ささ・遅さからこの菌は脂質好性であることが推定できます。また、エスクリン加水分解陽性であることからもC. argentoratenseは否定的。
実はこの菌は肉芽腫性乳腺炎の原因として知られるCorynebacterium kroppenstedtiiです。この菌はApi CoryneやRapID CB PlusでC. argentoratenseと誤同定されることが知られています。Manual of Clinical Microbiologyにおいても、誤同定されることやその場合の同定コードが明記されています。発育の遅さ、菌数の少ない場合が多いなど見過ごされる要素がある菌ですが、知識として頭の中にあれば必ず培養の監視網に引っかかってきます。
特に繰り返す乳腺炎の場合など、この菌の可能性が考えられますので必ず見つけてくださいね。繰り返すということは、先の培養でこの菌を見つけることが出来なかったという可能性・・・ 微生物検査技師の頑張りどころです。
この菌についての注意点、病原性などは以下の書籍にわかりやすく紹介されていますので、参考にしてみてください。
Medical Technology別冊 「いま知りたい 臨床微生物検査実践ガイド 珍しい細菌の同定・遺伝子検査・質量分析 」 大楠清文 著







